歯みがきのチューブしっかり使い切る

味はまだしっかり分かるので感謝

眼と耳を騙すと味が変わりだす

挨拶ににっこり笑顔付けておく

フィルターで真水に戻す技術力

余命とは戦うように生きること

のぼったら苦しいことも懐かしい

押し相撲腰を落とせと土俵際

今生きる老いの覚悟を試される

生きてるか友と交わしたご挨拶

初夢も昨日の夢も消えている

信号が消えて不安になる現世

甦る野心を隠す風見鶏

雑魚寝したエンジン音が心地良い

年輪を自分の年で割ってみる

爪と髭老いを感じたことがない

笑点で夫婦二人の笑い声

双六は三つ戻って進めない

お雑煮を腹一杯に食べた夢

占いを信じて買った宝くじ

お年玉気持ちだけよと言う老後

初日の出富士のお山を映し出す

死ぬことは平気と言っている恐れ

食欲が糖尿病を押しつぶす

またひとつ年を重ねている師走

妻の言うことを素直に聞く安堵

山頂に立つと空気が薄くなる

軽く見て火達磨になる浅い知恵

一年の仕事を終えた枯れ葉散る

綾取りのようにここまで生きて来た

喉ごしにどっぷりつかる生ビール

多数決これでも強い意思表示

人生を語る半端な空虚感

嗅覚と味覚は今も大丈夫

年末でまたまた物価値上中

停電があるとありがたみがわかる

流水が凍った零下十九度

天秤の上の錘の冷静さ

もう少し太れと笑う血糖値

またひとり忌中はがきになっている

ああ傘寿よくもここまで生きて来た

挨拶をしても笑顔はまだ見せぬ

霜焼けの耳たぶ少し痒くなる

着ぶくれて寒さに耐える大寒波

あれこれと自慢をしたい低い鼻

天秤の揺れる間はまだチャンス

はらはらに付いて行けない不整脈

三食が美味いと言えるのが望み

買いだめの米が古米になっていく

蟹味噌に日本酒が合う冬の夜