最後まで自分を知らぬまま眠る

新聞に載った眩しい五七五

ロボットが職人技を守り切る

妻の手を取ってゆっくり歩む日々

気がつけば腕立て伏せがままならぬ

エアコンが家計の赤字増やす夏

背の高い向日葵だけがひとり立つ

反省をしない老後を生きている

世の中を眩しく見せる嫉妬心

八十の手習い小筆いろはにほ

投資詐欺次々金を吸い上げる

転ばないために右手に杖を持つ

電気ガスも少し下げて欲しいもの

明日のこと不安と思う不整脈

手応えのあったテストの結果待ち

エアコンは団扇の良さが分からない

成金で王手をかける一手前

缶ビール何もためらうことはない

欲のない笑顔を消した玉の汗

蟻の死も私も同じ土になる

焦るなと右足左足を出す

街道に今もポツンと一里塚

病院の梯子で増える飲み薬

酷暑には負けないように汗を拭く

酒二合昔話の中にいる

山下りる熊の移動が止まらない

マジックが上手になった老いの指

血管を器用に動くカテーテル

二日酔いとても切ない朝が来る

焦げるほど暑い日影で缶ビール

まだまだと器用に動く老いの指

便利から離れてエコを感じ出す

人間の罪を呑み込んでいる海

ライバルが眩しく見えた時が華

信号を渡るゆとりが欲しい足

人間がいるから騒がしい地球

幸せは今だと言える思い切り

年金は上がる見込みのない老後

大谷が打ったら直ぐになるニュース

この先は過去を考えない老後

エアコンが無いとこの世は生きづらい

円高で国産牛に手が届く

長靴をはいていつもの散歩道

臆病を忘れたいから群れにいる

ヒーローになり損ねても悔いはない

濃紺の木々を圧倒する豪雨

ご先祖を知りたくなった寺参り

手際よく人を捌いている気質

情のない言葉を吐いている支配

弾尽きてしまえば平和すぐに来る